Nobuyuki_OSAKI
exhibition cv contact works

Solo Exhibition|Osaki Nobuyuki "Sundial"
Galleria Finarte
14.Nov.- 9 Dec 2023

大﨑のぶゆき「日時計」
2023年11月14日(火)-12月9日(土) 14:00〜19:00(日、月曜日休廊)
ガレリア フィナルテ
名古屋市中区栄2丁目4-11 チサンマンション広小路 209


 年月と共に変化することを内包する「日時計」のシリーズより、本展では2021-2022年のシュトゥットガルト滞在をモチーフとして印刷の退色現象をヒントに、プロセス印刷(CMYK)を用いた《日時計48°》を展示します。この日時計のシリーズは、長い期間をかけて経年変化や退色することを織り込んだ支持体とコーラジュされた写真やドローイング、紫外線を遮断する直角三角形のアクリル板で構成されています。撮影やドローイングが描かれた場所の「緯度」が直角三角形の一辺の角度となっていますが、これは日時計を作成する際にその土地の緯度を使って作ることから作品の場所を示す要素として取り入れられています。
 本作《日時計48°》は、コロナ禍真っ只中を経験したに在外研修で滞在したシュトゥットガルト(ドイツ)でのスナップ写真やお隣との置き手紙のやりとりを素材にしています。これらのモチーフをスクリーンプリントのプロセス印刷やカラーコピーを使って印刷に置き直し、イメージの物質化と退色することを想像した支持体/時間を吸収する支持体として機能させてます。10年後、50年後、100年後、この作品の表面は、紫外線が遮断されるところとされないところの差により、変化が生まれるでしょう。しかしながら、この作品は変化することが目的ではなく、作品が退色してしまうような先の未来について、私たちが想像し、現在と未来について考えることをコンセプトに制作されています。2020年〜2022年のコロナパンデミックは、誰しもが経験したことがない状況と、いったい未来はどうなるのか?と感じた日々でした。そのような中、異国の地でのお隣さんとのやりとりをモチーフにした本作は、隔離やソーシャルディスタンスといった当時の状況の反対側、人間的なコミュニケーションのやりとりに救われた気持ちが織り込まれています。



 アパート入居してひと月ほど経ったころ、お隣のルースさんから『旅行でしばらく留守にするから、朝夕植物に水あげて』『あと、貴方の部屋の日差しめっちゃ強いから私の家で寝てていわよ』と部屋の鍵をわたされた。6月のこの時期、シュトゥットガルトはとても暑く、最上階の部屋の日差しは非常に強い。一日忘れると枯れてしまいそうな天気に、僕は絶対に失敗出来ないミッションを与えられたのだ。 さすがに、ほんの少し前にやってきた知らない外国人の僕を信用しすぎでしょ?と思いつつ、彼女からそれぞれの鉢植えの水のやり方のレクチャーを受けて、彼らは長期の旅行に旅立っていった。ロックダウンが明けてすぐ、世界中がコロナ禍である旅行先はスイスでキャンプらしい。植物好きの彼女のベランダには様々な種類の草花が植えらている。ひときわ大きな鉢植えには、立派なバラが咲いていた。 (2021-2022年シュトゥットガルトより)


 


《 日時計(48°)》2023
布、ドローイング、直角三角形の紫外線カットアクリル、額


2021年から22年に滞在したシュトゥットガルト。ロックダウン中に描いていたドローイングと規制が明けてすぐの街を巡って買ってきた布、そしてシュトゥットガルトの緯度48°に切断された紫外線を遮断する直角三角形のアクリル板で構成されている。なお、日時計を作成する時は、その場所の緯度を用いて製作するそうだ。2019年のブエノスでの滞在を契機に始めた<日時計>のシリーズは、写真の場所や描かれた場所を示しつつ、紫外線の遮断作用によって時間の経過とともに長い時間を掛けて表面に差をもたらす。ドローイングや写真などが、経年で変化をもたらす紙や布などの支持体にコラージュされ、時が経てば変化していく(はず、だ)。
10年後、50年後、100年後の未来について想像する。長い年月をかけて日時計のように時を刻んでいく。差異のない作品表面は現在を指し示す。この構造を持つことで、色が退色した姿、すなわち未来を想像する契機をもたらすのだ。数十年後、私たちはどのような世界に生きているのだろうか。未来を想像することー 想像力で視えてくる「未来視』により、私たちの世界について考える。

 

《日時計48° 》2023
スクリーンプリント、ロックダウン中のドローイング、48°にカットしたUVアクリル板、額


web
http://www.nobuyuki-osaki.com

instagram
@nobuyukiosaki


大﨑のぶゆき/Osaki Nobuyuki 
京都市立芸術大学大学院修了。文化庁新進芸術家海外研修制度により、ドイツ・シュトゥットガルト美術大学に客員研究芸術家として滞在(2021-2022年)。名古屋市芸術奨励賞(2015年)、大阪市「咲くやこの花賞」受賞(2017年)。自身の存在を軸に世界を知覚するべく、独自の方法で描かれた絵が溶けていく作品など、世界の不確かさについての感覚を視覚化する作品を制作する。近年「イメージが消失する」という表現がもたらす感覚や思考をより深め、記憶や時間といったモチーフや時間概念の興味など、現代宇宙論から着想を得た「マルチプル・ライティング」というアイデアを展開する。主な展示として、「DOMANI・明日展 2022–23」(国立新美術館、2022-23年)、「LINKING TRANSFORMATIONS」(Stadtgalerlie Kiel、ドイツ、2020年)、「アイチアートクロニクル1919-2019」(愛知県美術館、2019年)「未見の星座」(東京都現代美術館、2015年)、「VOCA2013」(VOCA佳作賞受賞/上野の森美術館、2013年)、「現代絵画のいま」(兵庫県立美術館、2012年)など。大阪府と愛知県を拠点に活動。